【事実】 1.Aは、建築設計工事等を業とする株式会社である。Bは、複合商業施設の経営等を業とする株式会社である。Bは、Aとの間で、令和4年4月1日、Bの所有する土地上にAが鉄筋コンクリート造の5階建て店舗用建物(以下「甲建物」という。)を報酬2億円で新築することを内容とする建築請負契約(以下「本件請負契約」という。)を締結した。 2.本件請負契約の締結に当たって、Bは、Aに対して、「外壁の塗装には塗料αを使用してほしい。」と申し入れ、Aはこれを了承した。塗料αは、極めて鮮やかなピンク色の外壁用塗料である。 3.Aの担当者が近隣住民に建築計画の概要を説明した際に、地域の美観を損ねるとして多数の住民から反発を受けたため、Aは、周辺の景観に合致する、より明度の低い同系色の外壁用塗料である塗料βで甲建物の外壁を塗装することとした。 4.令和7年10月25日、塗料βによる外壁塗装を含む甲建物の工事が完了した。同月30日、Aは、Bに対して、甲建物を引き渡した。 5.令和7年10月31日、Bは、Aに対して、「塗料αは、Bの運営する他の店舗でも共通して用いられており、Bのコーポレートカラーとして特に採用したものである。外壁塗装に塗料βを使用したことは重大な契約違反である。この件の対処については、社内で検討の上、改めて協議させてもらう。」と申し入れた。 6.塗料βは、塗料αよりも耐久性が高く、防汚防水性能にも優れており、高価である。そのため、外壁塗装を塗料αで行った場合の甲建物の客観的価値よりも、外壁塗装を塗料βで行った場合の甲建物の客観的価値の方が高い。 〔設問1〕 【事実】1から6までを前提として、次の問いに答えなさい。 (1)Bが塗料αによる再塗装を求めたが、Aがこれを拒絶した場合において、Bは、Aに対して、本件請負契約に基づく報酬の減額を請求している。Bの請求が認められるか、【事実】6に留意しつつ論じなさい。 (2)Aが塗料αによる再塗装を行う旨の申入れを行ったが、Bがこれを拒絶した場合において、Bは、Aに対して、再塗装に要する費用を損害としてその賠償を請求している。Bの請求が認められるか論じなさい。