【事実】 7.Cは、個人でラーメン店を経営し、全国に多数の店舗を有する。Dは、創業当時からCの従業員として重要な貢献をしてきたが、独立して自分のラーメン店を持ちたいと思うようになり、その旨をCに伝えた。 8.Cは、Dの長年の功労に報いたいと考え、Cの所有する土地及びその上の店舗用建物(以下併せて「乙不動産」という。)を無償でDに貸すが、固定資産税はDに負担してほしいと申し出た。Dは、この申出を受け、令和2年1月10日、Cとの間で、上記の内容を記した覚書(以下「本件覚書」という。)を取り交わして使用貸借契約を締結し、これに基づいて乙不動産の引渡しを受けた。 同年3月1日、Dは、乙不動産においてラーメン店(以下「本件ラーメン店」という。)を開業し、乙不動産の固定資産税を同年分からCに代わり毎年支払った。 9.令和8年1月、Cは死亡し、子EがCを単独相続したが、Eは、詳しい事情を知らないまま、乙不動産の固定資産税をDに支払ってもらっていた。なお、乙不動産の登記名義人は、Cのままであった。 10.令和9年3月1日、Dは死亡し、乙不動産は本件ラーメン店の従業員により閉鎖された。 Dを単独相続した子Fは、本件ラーメン店の営業には全く関与していなかったが、乙不動産はDがCから贈与を受けたものと理解していた。そこで、Fは、Eに対して、「乙不動産は、DがCから贈与を受けたものであるから、相続を機会に、登記名義を自分に移したい。」と相談した。Eは、固定資産税をDが支払っていたのはそういうわけだったのかと納得し、同年4月1日、乙不動産の登記名義人をFとするために必要な登記が行われた。その後、Fは、本件ラーメン店の営業を引き継ぐことを決意し、同年5月1日、前記従業員から乙不動産の管理を引き継ぎ、間もなく営業を再開した。Fは、令和29年に至るまで、乙不動産において本件ラーメン店の営業を継続している。 11.令和29年3月、Eは、本件覚書を発見し、CからDへの乙不動産の贈与が行われていなかったことを知った。同年4月1日、Eは、Fに対し、所有権に基づき、乙不動産の明渡しを請求する訴えを提起した。これに対して、Fは、同月15日、乙不動産の20年の取得時効を援用した。 〔設問2〕 【事実】7から11までを前提として、【事実】11においてFが援用する乙不動産の取得時効の成否について論じなさい。